至誠一貫(自尊・自恃・自制)

校長よりPrincipal

平成31度入学式 式辞


 雲流る大宝の嶺を南にここ槇ヶ峰,元号「令和」が発表され新しい時代の到来を待つこの良き日,多数のご来賓の皆様のご臨席の下,広島県立尾道北高等学校第七十三回入学式が挙行できますこと,まことに光栄であり慶びに堪えません。心よりお礼申し上げます。
 保護者の皆様におかれましては,今朝北高の制服に袖を通したわが子の晴れ姿にまぶしさと頼もしさを感じられたことでしょう。感慨もひとしおのことと拝察いたします。誠におめでとうございます。
 新入生の皆さん入学おめでとうございます。今皆さんの胸中は新しい生活への期待と不安でいっぱいでしょう。今ここから皆さんの北高が始まります。
 尾道北高校は旧制尾道中学を前身に九十年を超える歴史を誇り,尾道中学と併せ,これまで二万三千人以上の優秀な卒業生が,地元,県内,国内はもとより世界で活躍して参りました。地域創生の時代,引き続き尾道をはじめ尾三地域の核として価値をもたらすことが求められる学校,それが本校です。
 古来より交通の要衝であり都市として多くの人々のエネルギーを集めてきた港町尾道,開港八百五十年を迎えるその尾道にあって,穏やかな海と接する街並みとは一線を画すここ槇ヶ峰。本校の前庭が醸し出す風格,背筋が自然と伸びる清澄な空気。この素晴らしい環境にある北高に入学を果たした皆さん,皆さんをお迎えするに当たり本日は三つのことを伝えます。

1 学校の価値について
 優れた学校は,皆さん個人,一人ではできないことを可能にします。その力を持った学校が本校です。北高の集団のなかにいるから,級友や先輩・先生から前向きな力を受け,想像以上のことが達成できるのです。この恵まれた集団の中で自分自身を磨くことができる,それが北高の価値です。
 アイザック・ニュートンは自身のことを次のように述べています。If I have seen further, it is by standing on the shoulders of giants. ~もし私がより遠くを見てきたとしたら,それは巨人たちの肩の上に立っているからである。~ 過去の偉大な巨人たち,そして名もなき無数の人たちの生と死の上に築かれた人類の知的遺産。そのエッセンスを受け継ぎ,新しい価値を加え次につないでいく。学校は,過去と現在・未来をつなぐ場です。皆さん一人一人が学ぶという使命を帯びて社会を歴史をつないでいくのです。新しい物語を紡いでゆくのです。一緒に価値ある北高の物語を創っていきましょう。

2 優れた学びについて
 アインシュタインは次のように述べています。The important thing is not to stop questioning. ~重要なことは問うことをやめないことだ。~
 問うことの前提は,自分をあきらかにすることです。つまり,自らを問うことです。本校の校訓は「自尊」「自恃」「自制」,自らを尊び,自らを恃(たの)み,自らを制する,まさに自分の在り方を問う校訓です。
 学習指導要領が改訂され,本県では「学びの変革」が展開される最中。自分をしっかり持ち,主体性を育てることは時代と社会が今教育に求めるものです。北高では生活の様々な場面で,自ら決めて,学び・行動することを大切にしたいと考えています。
 人工知能が生活の中に浸透する現在,我々に求められるのは人間固有の力であり価値です。人間にしかできないことは何か。それは自発的な行動であり,主体的な判断です。人工知能が利用する莫大な前例をもとに機能するアルゴリズムには置き換えられない,深い洞察です。異質なものを受け入れる寛容な想像力です。こうした人間固有の力を高める学びが,今求められているのです。
 変化の速い,先の見えない不安な時代ですが,優れた学びがもたらす資質・心の在り方に,社会の未来を,光明を探り前に進みましょう。本校での教科学習・キャリア学習・特別活動を通じ,希望を創造し歩んでいきましょう。

3 校是 「至誠一貫」について
 本校の校是は「至誠一貫」,『「至誠」は「まごころ」である,真面目である,良心である』とは吉本佐吉尾道中学初代校長のことばです。一貫とは,変わらないぶれない態度,道徳や信頼・責任を重んじ一貫した態度を示す英語の言葉にintegrityがあります。経営学の父ピーター・ドラッカーはリーダーのもっとも大切な資質はintegrityだと述べています。まさに本校に根付く「至誠一貫」の精神が,ドラッカーの言葉どおり社会の随所にリーダーを輩出してきたのだと思います。校是の精神を受け継ぎ,皆さんも随所にリーダーであってほしい。本校に根付くその気概を受け継ぎリーダーとして育ってください。

最後に
 私たち北高職員は,学び続ける同志として,生徒の皆さんとともに研鑽をつみ,遥かなる我らがのぞみ・理想を見つめ,たゆまず歩みを続けてゆくことをここに誓い,式辞といたします。

平成三十一年四月九日
広島県立尾道北高等学校
校長  松井 太




第70回卒業証書授与式 式辞


 卒業生の皆さん,卒業おめでとうございます。本校で過ごした濃密な時間。友,先生,家族の方とともに経験した試練,乗り越えた感動,日常の喜び,悲しみ,様々な思い出がその胸を去来していることでしょう。
 尾道北高校の素晴らしいところは,皆さんを挑戦に駆り立てる場であるということです。人を駆り立て,誇りと気概を与える空気が,ここ槇ヶ峰には張りつめています。それは過去の先輩たちと皆さん一人一人が作った校風です。挑戦する勇気,そして友と切磋琢磨し,「鍛え睦べる」校風を,皆さん一人一人が育んできた1000日を超える時間,その時間が与えてくれた誇りを,力を,今後の人生で感じ取る日が必ず来ます。
 本日,三月二日,進路実現をめざし,未だ挑戦を続けている多くの生徒の皆さんがいます。その勇気を,挑戦する勇気を,私は誇りに思っています。不安を払いのけ, やりきってください。皆さんが胸を張ってこの日を語れる時が来ます。
 卒業のことを英語でcommencementとも言います。「始まり」という意味です。新しい人生の始まりに臨む皆さんに3つのことをお伝えします。
 まずは学ぶこと
 皆さんにとって学びとはなんでしょう。学校の使命は,人類が気の遠くなるような数多くの経験と時間を経て積み上げてきた知的遺産を受け継ぎ,未来へと託すことです。過去の偉大な巨人たち,そして名も無き多くの人たちの生と死の営みの中で蓄積された知を受け継ぎ,創造し,新たな価値を皆さん一人一人が付け加える。学びの行為とは,まさに過去を未来に繋ぐ営みです。その営みに参画し,生涯にわたり自分の学びを生ききることで,社会は持続可能となるのです。人としての使命が果たせるのです。変化を恐れず,多様な人々と協働し,一歩を踏み出してください。その中に皆さんが生きる意味が創られていくのです。
 大変動の時代,世界は答えの出ない課題にあふれています。今,大切なのは,テクノロジーの進歩を恐れず,その可能性と限界に知力と想像力を働かせ,仕事や生活,地域や世界の様々な局面を,新しい目で見直すことだと思います。悲観や楽観に安易に気持ちを委ね,思考停止するのではなく,希望につながる学びを,リアルに積み上げること。そのことを皆さんに期待したい。
 私たちは,過去に帰ることも,今にとどまることもできません。豊かな感性,イマジネーション,創造性,命への慈しみ,共感,そして意味を問う力。優れた学びの中に織り込まれたこうした価値を,人間固有の価値を,自分の中に見出し磨き育てること,そこに光明を探り一歩一歩前に進みましょう。
 次に大人としての生き方について
 ケント・M・キースという人は次のように述べてマザーテレサをはじめ多くの人に影響を与えました。「ひとは不合理で,わからずやで,わがままだ。それでも人を愛しなさい。」
 不条理な世界を生きる私たち。その中で希望を持ち続けること並大抵のことではありません。多数の意見に押しやられ,人間の弱さや愚かさに直面し,悩む。自分の凡庸さに落胆する。それでもなお前を向く。それでもなお人を愛する。それでもなお,と,自分を励まし,大人としての生き方を歩んでほしいと思います。
 最後に,我々一人一人個体としての命には限りがあります。その運命にもかかわらず,いやそれゆえに,人間や自然,そして自分の命の営みに畏敬の念を感じてほしい。皆さんの命を一輪の花に喩えたメッセージを哲学者 佐野之人(さのゆきひと)先生の言葉から引用いたします。
 「一輪の花も全宇宙の働きがこの一点に集中することによって初めて咲くことができる。全宇宙の恵みによって一輪の花が咲くのだ。逆にその花が咲くことによって全宇宙が変わる。どんなに小さなものでも,それが宇宙の中にある以上,その中にある全てのものにそれぞれの仕方で恵みを与えているのだ。」
 皆さんは私たちの未来です。この大きなつながりの中で皆さん一人ひとりが咲かせる花が,この宇宙にある全てのものにそれぞれの仕方で恵みを与えていく。ひとりひとりが花を咲かせ,かけがえの無い人生を,悔いなく,生きてください。 
 以上,式辞といたします。

平成三十一年三月二日
広島県立尾道北高等学校
校長  松井 太




校長あいさつ


校長 挨拶


校長肖像

広島県立尾道北高等学校
校長 松井 太

 広島県立尾道北高等学校は,大正14年に創立され,旧制尾道中学校を前身とする,90年を超える伝統校です。卒業生も2万1千名を超え,地元尾道はもとより県内・国内外において,各界各層で活躍する人材を数多く輩出しています。
 校門を通ると風格と誇りを感じさせる広い前庭が控えています。全国から多数の学校訪問を受ける本校ですが,その際にもお褒めの言葉をいただいております。
 港町尾道の巷を少し離れ,空と山に囲まれながら,その向こうにある広い世界を目指し、校是「至誠一貫」の精神のもと,日夜学びに部活動に切磋琢磨する生徒たちの活気が校内に満ち溢れています。社会人となった後も,尾道北高校での濃密な日々を通して培った気概が,友情が,自分の人生を支えてくれていることに改めて気付く卒業生も多いのではないでしょうか。
 尾道市の普通科進学校として以前より安定した評価をいただいてきましたが,特に総合学科開設以後,教科学習・キャリア学習・特別活動の3本の柱がうまく機能し,3年という限られた時間で,大きく学力を伸ばし,現役で難関大学等へ進路実現を果たす生徒が飛躍的に増加しました。生徒を手塩にかける学校として,また,進路指導体制が組織的である学校として,全国に知られるようになりました。
 近年,生徒にも教師にも,より確かな主体性と深い学びが求められる時代となっています。本校教育の持つ精神を引き継ぎ,キャリア教育・ICTの活用等の本校の特質を時代の要請とすり合わせつつ,AIの時代だからこそ光る、「人間固有の価値を磨く学び」を探ってまいりたいと思います。「未来を動かす尾北」は着実に前に進んでいきます。
 今後とも本校教育にたいしまして,皆様の温かいご支援とご協力をよろしくお願いいたします。



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